AIを導入済みの上場企業は2017年の6.8%から、2020年で25.6%と約4倍となりました。4社に1社は導入しており、社会全体としてAIが浸透してきています。コンタクトセンター業界のおけるAIの導入の用途は大きくは「お客様との接点としての役割」と「企業の社内システムとしての役割」の2点となります。
前者の「お客様との接点としての役割」としてはChatbot、Voicebot、FAQサイト検索時の意図理解の利用が多く、後者の「企業の社内システムとしての役割」としてはテレコミュニケーター(オペレーター)の応対サポートや、お客様の声のVOC活動のための分析などに利用されています。もう少しここを掘り下げて説明します。
まず、「お客様との接点としての役割」ですが、Chatbotはスマートフォンの普及、LINEなどのチャットベースの会話の浸透と企業側としてテレコミュニケーター不足の課題解決の両面より、導入が加速しています。また、ユーザ側も自分で調べることが当たり前の世代やまずは調べてみようと意識する人が増えてきていることも理由の一つです。もちろん最近ではコロナの影響もありオンライン接客への対応という側面もあります。
これらが浸透していく中でユーザ行動として、より簡易な行動により解決したいというエフォートレスへの傾向がさらに進んできています。そのため、VoicebotやFAQサイト検索時の意図理解のような、話すだけでいい、アバウトに聞きても答えてくれる、それも24時間365日、自分の好きなときに、というユーザへの心理的負担が少ないサポートが望まれ、それに企業が応える形でAIの導入が進んでいる傾向があります。一方、企業側としてもテレコミュニケーター不足という課題もあり、出来るだけユーザ側で自主的に解決できる手段を提供し、電話がかからないコールセンターを目指している企業側の意図もこれらを加速させている要因となっています。
後者の「企業の社内システムとしての役割」については、大企業もしくはユーザサポートを強く重要視している企業が導入している傾向があります。理由はこの領域のAIシステム自体が高額になる傾向があることと、導入までにノウハウの整理やオペレーションの変更など導入側でも負荷が多くかかるためです。
例えばテレコミュニケーターの応対サポートはお客様が話している内容をリアルタイムで音声認識を行い、ナレッジAIへ引き渡し、テレコミュニケーターの画面に対象となる質問などの答えや参考情報を表示します。そのため、ユーザの発話データや、AIが分かるようにFAQのカテゴリの整備などの準備が必要となります。近年、出来ることをある程度絞った価格がお手頃なものも出てきており、導入検討をする企業が増えてきている傾向もあります。
2014年頃にAIの価値が再度見直され、上述のような状況にいたりますが、もうひとつご質問いただきましたコロナ禍における今後のコンタクトセンターにおいてAIはどのような領域の活用が考えられるのか、については、次号でお答えします。
(掲載:CCAJ News Vol.289)
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