コンタクトセンターQ&A

コンタクトセンターQ&A

コミュニケーション・ヒューマンリソース・センターマネージメント・スクリプト・システムなど、あなたの疑問・質問に、コンタクトセンターのエキスパートがお答えします。


2020年10月


回答者

水野 崇 氏

りらいあコミュニケーションズ株式会社 マーケティング部 コミュニケーションデザインマネジャー


「顧客視点から考える、ナレッジマネジメント実践講座~実務で使える「FAQ運用サイクル」を学ぶ~」講師

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水野 崇 氏

りらいあコミュニケーションズ株式会社 マーケティング部 コミュニケーションデザインマネジャー


「顧客視点から考える、ナレッジマネジメント実践講座~実務で使える「FAQ運用サイクル」を学ぶ~」講師

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質問


新たに立ち上げるコールセンターの業務構築に関わることから、テレコミュニケーターが使うFAQをゼロから作成することになりました。これまでの業務ではFAQの更新や改善をした経験がありますが、まだどのような問合せがありそうか、入ってくるのかが見当がつかない中、どのようなことに留意してFAQ作成を進めていけば良いか、教えてください。

回答


業務視点で企業側からの「回答内容(Answer)」を先にイメージしてから、顧客の「問合せ(Question)」を分類してしまいがちです。顧客視点を維持するために、カスタマーエクスペリエンス・マップを描き、顧客が商品・サービスを体験していく過程の中で「Q」を捉えて、その「Q」に対する「A」を作っていく手順でFAQ作成を進められるとより良いと思います。

1. 顧客の「Q」を捉える

まず、顧客視点を維持するには、コールセンターに問合せをいただく顧客はどのような方々で、どんな時に、何を困りごとや問題として抱えているか、この3点を明確にして構造的に捉えておくことが大切です。

(ア)顧客は誰か
自社の商品・サービスについて、広く多くの顧客からか、あるいは特定の顧客からの問合せのいずれの想定でも、顧客視点を維持して顧客を構造的に捉えておくには「顧客になってみる」ことが大切です。広く多くの顧客であればまずはご自身を、特定の顧客であれば、想定した顧客の属性やライフスタイルに近い周囲の人をイメージして、自社の商品・サービスとの接点について、それぞれ行動と気持ちの動きを推し量っていきます。「顧客になってみる」際に、業務視点は一切排除して顧客視点から商品・サービスを捉え続けることがポイントです。自分自身ならどう行動するか、どのような気持ちになるかという視点を持ち続けることは、企業にとって、業務にとって都合が良いペルソナになることを避けられます。

(イ)顧客の体験を辿り、シーンを具体化する
顧客の「Q」を捉えるには、カスタマーエクスペリエンス・マップを描き、顧客がコールセンターに問合せするその瞬間からだけでなく、連続する体験の中でどのシーンで困りごとや問題を抱えるのかを推し量ることが重要です。自社の商品・サービスを知り、気づくタイミングの少し前から、購入・利用前、購入・利用を決める瞬間、購入・利用後をイメージしていきます。顧客の連続的なそれらの体験は、場面が思い浮かぶように顧客のコトバでありありと具体的なシーンを添えてカスタマーエクスペリエンス・マップに書き出していきます。

(ウ)顧客との接点と気持ちを捉える
カスタマーエクスペリエンス・マップに書き出す顧客の連続的なそれらの体験には、「接点」と「気持ちのフラグ」を併記していくと良いでしょう。「接点」については、デバイスとチャネル、場所をそれぞれ分けることが重要で、例えば、スマホでチャットを利用、場所は電車の中(移動中)のように具体的にその情景を追えるようにしておきましょう。また「気持ちのフラグ」は、ポジティブ、ニュートラル、ネガティブの3つに分類しておきます。

(エ)顧客の体験を辿り直し、気持ちの微細な変化に着目する
コールセンターに問合せする直前では、このままでは困りごとや問題が解決されないと感じていることが多いことから、顧客の連続的な体験を辿り直しながらその中で特にネガティブに振れる際の気持ちの変化を見つけていきます。そのポイントで、顧客が感じている気持ちをコトバで書き出します。ここでは「Q」をイメージすることなく、顧客になりきってその時に感じていることを普段使いのコトバで短く表現します。

2.「Q」を量産する

(ア)顧客になりきって思い巡らし問合せを書き出す
顧客視点を維持したまま、先ほど普段使いのコトバで顧客の気持ちを表現したポイントを起点に「Q」を量産していきます。自社の商品・サービスの『何について、どのような問合せ』をしそうか、顧客になりきってそれまでの行動と気持ちに基づいて顧客のコトバで具体的な場面が思い浮かぶように、ありありと「Q」を書き出していきます。

(イ)顧客が使うコトバでインデックスをつくる
それぞれのチャネルが持つ特性を踏まえ、量産した「Q」毎に「A」を当てるチャネルとしてより良い分担とその順番を再考します。この時、顧客が使うコトバでFAQのインデックス化を図っておくと、コールセンターの電話チャネルだけの利用でなく、Web サイトのQAコンテンツやチャットボット、有人チャット、メールなど非対面の他チャネルで広く活用できます。それら全体の「Q」から電話チャネルで対応すべき「Q」に絞り込み、その「Q」の総量を測りながら商品・サービスに関する「A」を作成していくことで、新たに立ち上げるコールセンターのFAQを準備できます。

このように、顧客の「Q」を捉え、その「Q」を量産する過程を経た FAQ を持つことは、チャネルを跨ぐことを前提としたコミュニケーション設計やチャネル間の流れをより良くすることに活用できます。業務視点に強く引っ張られずに、顧客視点を維持し続けることにご留意いただければ、ナレッジマネジメントが顧客とのコミュニケーションをより良くし続けられる持続的な仕組みになっていくものと確信しています。
(掲載:CCAJ News Vol.279 / CCAJ News Vol.283)


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